避妊をやめてから赤ちゃんを授かるまでに何か月(何年)かかるでしょうか?

妊娠待ち時間(=受胎待ち時間)は、「妊娠を希望して避妊をやめてから妊娠するまでの期間」です。妊娠待ち時間が1年以上である「不妊」を経験される方はかなり多くいらっしゃるようです。

日本の女性を対象として私たちが実施したインターネット調査によると、30~32歳の女性が避妊をやめて6ヶ月で妊娠する確率は41%、12か月で妊娠する確率は66%でした。この確率は年齢が高くなるほど低くなり、すなわち妊娠待ち時間が長くなる傾向がありました。もっとも妊娠待ち時間が短かった24~26歳の女性でも、避妊をやめてから12か月で妊娠する確率は80%でした(full textTable 5参照)。

日本産科婦人科学会は不妊の定義を、「妊娠を望む健康な男女が避妊をしないで性交をしているにもかかわらず、1年以上妊娠しないもの」としています。本研究の結果は、妊娠を希望するカップルのうちいわゆる「不妊」を経験する割合がかなり高い可能性を示唆しています。

しかしながら、今回の研究は楽天リサーチモニターを対象としたインターネット調査であり、日本人口の代表性のあるサンプルではないことに注意が必要です。今後は、代表性の高いサンプルを用いた妊娠待ち時間に関する調査の実施が待たれます。

「日本のカップルの年齢と第1子を授かるまでの受胎待ち時間」
小西 祥子, 佐方 奏夜子, 大庭 真梨, Kathleen A O’Connor
人口学研究 2018 58:1-18  full text

【論文抄録】
現代の集団を対象とした先行研究において,受胎確率(受胎する月毎の確率)は20歳代から30歳代前半までの女性で最も高く,年齢を重ねるごとに低下することが報告されている。他の先進諸国と同様に日本においても,結婚年齢および出産年齢の上昇が受胎確率の低下をもたらすことによる不妊の増加が懸念されているものの,関連する学術的な報告は少ない。また受胎確率に影響する年齢以外の要因も日本の低出生力に寄与している可能性もある。本研究は日本における受胎確率の年齢パタンを明らかにすることを目的として,受胎待ち時間を用いて年齢別の受胎確率を推定した。日本全国に居住する20-44歳の女性6,752人を対象として,第1子あるいは現在の妊娠に至った受胎待ち時間(time to pregnancy, TTP; 避妊をやめてから受胎するまでの月数)および基礎的な人口学的属性に関する情報を質問票によって収集した。解析に用いたサンプルは,過去60ヶ月以内に妊娠を希望して避妊をやめた女性1,324人である。内訳は,経産婦816人(グループA),現在妊娠中の未産婦173人(グループB),現在妊娠する可能性のある未産婦335人(グループC)である。TTPの値(グループAとBは打ち切りなし,グループCは打ち切り)を用いて,コックス比例ハザード回帰モデルによってカップルの年齢別の受胎確率比(fecundability ratio, FR)および95%信頼区間(confidence interval, CI)を推定した。また避妊をやめてから3, 6, 12, 24ヶ月後の累積受胎確率も推定した。24-26歳の女性(FR: 1.00)と比較して,27歳以上の女性は有意に低いFRを示した。30-32歳女性では0.68(95%CI: 0.56, 0.82),36-38歳女性では0.41(95% CI: 0.31, 0.53)であった。男性の年齢が高いことも低いFRと関連していた。避妊をやめてから12ヶ月後の累積妊娠確率は24-26歳の女性で最も高く80%(95%CI: 75%, 84%)であり,年齢が上がるとともに低下し,30-32歳では66%(95%CI: 61%, 71%),36-38歳では48%(95%CI: 39%, 55%)であった。第1子の妊娠を希望して避妊をやめた経験をもつ本研究の対象集団において,受胎確率は24-26歳で最も高く,より年齢の高い女性で受胎確率が低かった。男性の年齢が高いことも低い受胎確率と関連していた。受胎確率に対する年齢の影響は,未産婦と比較して経産婦で弱く,また未産婦は経産婦と比較して年齢がより高く不妊治療の経験者が多い傾向があった。よって年齢の影響以外にも、まだ明らかになっていない要因が日本の低出生力に寄与していると推測される。

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