妊娠待ち時間を測るための研究デザインについて、研究者向けのお話です。

集団の妊娠待ち時間を測るためには、右側打ち切りの妊娠待ち時間についても対象に含める必要があるのは妊娠待ち時間の測り方(1)で書いた通りです。

最も理想的な研究デザインは前向きコホート研究です。妊娠待ち時間を前向きに測るためには、妊娠を希望して避妊をやめた女性(あるいは男性、カップル)を対象として、避妊をやめた時点で調査を開始しなければなりません。先進国ではこのような条件を満たす女性は全女性人口のおよそ1%程度といわれています。その中でさらに調査に協力してくださる方を探すのは至難の業です。ですので妊娠待ち時間に関する前向きコホート調査は世界でもまだそれほど多く実施されていません。

前向きコホート研究よりも実現可能性を高くした方法として、current duration approachがあります。まず調査時点で妊娠の可能性のある女性(パートナーと性交渉があり避妊をしておらず、妊娠もしていない)を対象として、避妊をやめてから調査時点までの期間(current duration of unprotected intercourse = 右側打ち切りの妊娠待ち時間)を聞き取ります。このcurrent durationを基にして、集団内での妊娠待ち時間の分布を推定します。これまでフランスやアメリカでcurrent duration approachを用いて不妊割合が推定されています。

他には、過去の妊娠待ち時間について遡って収集するhistorical prospective designがあります。子どものいる方と合わせていない方も調査対象とすることで、右側打ち切りの妊娠待ち時間についても情報を収集することができます。私たちは日本の女性を対象としてhistorical prospective designを用いて、年齢階級ごとの妊娠待ち時間を推定しました(参照:年齢と妊娠待ち時間)。

打ち切りでない(つまり妊娠に至った)妊娠待ち時間のみのデータは、妊婦や経産婦を対象とした横断調査で収集することができます。環境曝露と妊娠待ち時間の関連を解析した研究では横断調査が用いられることも多いです。ただし、年齢と妊娠待ち時間の関連については打ち切りを含まないデータではバイアスが生じることが報告されていますので、年齢の影響をみたい場合には上記の打ち切りデータを考慮できる研究デザインを用いることが好ましいでしょう。

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